ゲノムアーキテクト

「長鎖DNAを合成する技術」と「合成長鎖DNAをゲノムとする人工細胞を創出する技術」の革新を続け、それを駆使することで、ゲノムが担う生命システムを支える原理を解明するとともに、人工細胞を活用する次世代産業革命に貢献します。

キーワード: ゲノム合成 / 合成生物学 / GP-Write / 人工細胞 / ヒトゲノム



 ゲノムを解読する技術が成熟しつつある今、日本国内ではまだ認知度が低いですが、世界ではゲノム全体(あるいはその一部)を望みのままに合成し、その合成ゲノムで機能する、産業的に有用な人工細胞を創出する技術が芽生えてきています。そのような合成ゲノムで生育する人工細胞の応用先として現在は、ワクチンや抗体医薬といった医薬品製造や、目的の治療効果をもたせた細胞を体内に導入する細胞治療といった医学医療の方面が大きく注目されています。しかしすでに、農業、畜産、漁業、食料、エネルギー、環境、材料、美容、宇宙産業といった多種多様な分野での産業応用を視野に入れている企業が海外では現れています。要するに、ゲノム合成は、バイオを超えたあらゆる産業の次世代基盤技術として期待され始めています。

 またゲノム合成は、学術研究においても強力な手法です。ヒトゲノムだけでなく、ゲノム配列が解読されている多くの他の生物種のゲノムにおいても、その大部分のゲノム領域がもつ機能性は未だほとんど解明されていません。特に、遺伝子間領域やノンコード領域といった未知なるゲノム領域には大きな関心が寄せられていますが、そのようなゲノム領域がもつ機能についてはほとんど理解が進んでいません。しかしすでに、興味ある広いゲノム領域を研究目的にあわせて合成し、生細胞内で任意のゲノム位置にその長鎖ゲノム断片を挿入し、その影響を調べることができるようになりつつあります。このようなゲノム工学的戦略は、現在注目を浴びているゲノム編集という方法でも一部は実施可能です。しかし、染色体全体をゼロから完全に作り直す場合だけでなく、広いゲノム領域の多くの部分を同時に改変させる場合でも、長鎖ゲノムを合成し、それを生細胞内に組み入れるゲノム合成的戦略の方が、多種多様な変異体を体系的に改変し、調べることができるため、ゲノム合成はゲノム編集とは違う次元で、独自の有用性をもつ方法だといえます。本グループは、両方法を適宜活用し、技術開発を進めます。

 「ゲノム合成」に対する需要が、学術と産業の両研究方面で今後ますます高まることは明白です。そこで本グループは、本学院所属の教員が保有するゲノム科学の知識と、ゲノム合成技術のノウハウを基盤に、世界のニーズに応えられる「長鎖DNAを合成する技術」と「合成長鎖DNAをゲノムとする人工細胞を創出する技術」の開発を始めました。またこれと平行して、開発された技術を学術研究や産業研究に転用し、合成ゲノムという方法がもつ有用性を最大限に活用する研究も2017年に開始する予定です。

 なお本グループは、2017年5月に正式発足する「ゲノム合成国際コンソーシアム(GP-Write)」と、計画段階からすでに連携しており、本グループの研究開発の一部は、同コンソーシアムに参画している世界14カ国、100以上の大学・研究所、200名以上の科学者との共同研究として実施することになっています。この国際ネットワークで中心的に活動することにより、本グループはゲノム合成分野と、その周辺分野における世界最先端の情報と技術を迅速に導入することが可能となっています(GP-Write:http://engineeringbiologycenter.org/)。

 「ゲノム合成」を日本国内に広く普及させることも本グループの大きな社会的使命です。ご興味のある大学・研究所・企業の皆さんとの協働を望んでおります。お気軽にお問い合わせください。
東工大メンバー所属専門分野

相澤 康則(研究総括)生命理工学院・准教授ゲノム科学
金子 真也生命理工学院・助教ゲノム工学
鈴木 祟之生命理工学院・准教授ショウジョウバエ神経科学
清尾 康志生命理工学院・准教授核酸化学
林 宣宏生命理工学院・准教授プロテオミクス
廣田 順二バイオ研究基盤支援総合センター・准教授マウス神経科学
布施 新一郎科学技術創成研究院・准教授有機化学·天然物科学·創薬化学
正木 慶昭生命理工学院・助教核酸化学


外部メンバー所属専門分野

荒木 通啓京都大学大学院医学研究科・特定教授システム生物学、生命情報科学
板谷 光泰慶応義塾大学環境情報学部・教授ゲノム工学
高雄 啓三富山大学 生命科学先端研究支援ユニット・教授行動生理学
増井 徹慶応義塾大学医学部・教授研究倫理、公衆衛生学